ログハウスキット販売への経緯

1. ログハウスとの出会い

私(中峯)とログハウスの最初の出会いは1982年、
当時の輸出入ビジネスの都合でドイツのフランクフルトに滞在し、
週末に近くの保養地のビースバーデンという温泉町に足をのばした時でした。

温泉とサウナでくつろいで 町を歩いていると、
街外れの広大な丘陵に小さな畑と
その横に建てられた何百もの色とりどりのログハウスに出会いました。

緩やかなカーブを描く丘に並んだ何百棟の赤や青や緑や黄色のログハウス、
それはそれは美しく、私は目をうばわれました。

後で分かったことですが、それは『クラインガルテン』と呼ばれるもので、
第二次世界大戦中のヒットラーの軍事政策として、フランクフルトのような大都市近隣で
「50坪位の農地と10畳程度のログハウス」を市民が建て、
緊急時にここで避難生活できるようにと考え出され、
今もドイツ市民に受け継がれているものだそうです。

それは一般的なログハウスではなく
「ミニログハウス(ガーデンハウス)」と呼ばれるドイツ特有の簡易式ログハウスでした。

とにかくこの光景は美しく、
そしてこのログハウス群を市民が自分たちで(素人たちで)何百棟も建てたという事実は
その後も忘れることは出来ませんでした。

2. 自分のためにログハウス建築

その後、ヒョンなことから近郊の山(ただの普通の山)が手に入ることになり、
そこに何かの建物が必要でした。

昔のドイツのログハウスの記憶も手伝って、
自分のために ログハウスを建てることにしました。

それはフィンランドから輸入されたログハウスのキットで、
当時フィンランドのログハウスを建ててくれる建築屋さんが見つからず、
仕方なく自分たちでそのログハウスキットを建築しました。

 

 

その時はまだ建築素人だったので研究時間は多くかかりましたが、
ログハウスを自分たちで建てることは大変楽しく
(それをセルフビルドと言うことは後で知りました)
その後の「ログハウスを使う楽しさ」もさることながら、
それ以上にセルフビルドは充実した満足度の高いレジャーで、
後々まで「家族の大きな思い出」として残りました。

3. フィンランドログとの出会い

家族のためにログハウスを建てて楽しんでいる最中にある考えに至りました。

「ログハウスの部材キットを輸入して日本で販売したら、
ログハウスは案外安手に入れられる。
ログハウスをセルフビルドすることは難しくなく、むしろとても楽しい。

そのことをもっともっと多くの人達に伝えることができるのではないか?」
ということでした。

私たちと「ログハウスキット輸入ビジネス」ができそうな会社を探しに
早速フィンランドに出向きました。

私たちは輸出入ビジネスの会社でしたので、
実際にログハウスビジネスを開始するにはフィンランドの会社にも条件がありました。

 

1.実際に自分たちでログハウスキットを製作している会社であること

ログハウスを輸出している会社でも、
商社やサプライヤーと呼ばれる輸出代行業の会社とはお付き合いするつもりはありません。

「フィンランドからログハウスを直輸入」と言っている日本のログハウス販売会社も、
実際にはその多くの場合は輸出代理店や代理人が入っています。

日本のお客様や日本の条件にあったログハウスを提供する為には
一朝一夕では上手くいかないでしょう。

私たちの要望や改良点を商品として反映して、
日本のお客様に満足してもらうログハウスキットを完成するためには、
それを製作するために実際の工場を持つ会社と直接話をして
一緒に作り上げていく必要があります。

 

 

2.英語でビジネスできること

フィンランドはフィンランド語です。

当時、フィンランド人の多くは英語よりドイツ語を得意としていました。
私たちはフィンランド語もドイツ語も無理なので、
英語でやりとりできることが重要でした。

 

3.船積み(海外輸送)に経験があること

ログハウス部材キットをフィンランド国内で販売していても
海外へ納品となるとさまざまな輸出に伴う規制や書類作成、及び手続きが必要になります。
その部分が未経験だと、どうしても輸出代行人に頼ってしまうことになります。

ですから、私達はすでに海外輸出の経験を持つ工場を探す必要がありました。

 

 

4.なによりもログハウスキットとして完成された商品を提供してくれること

フィンランド国内への納品とは異なり、
遠方の日本でそのキットを販売するわけですから、
そのログハウスがきちんと完成されたキットでなければなりません。

 

5.非常に抽象的ですが、人間的に信頼できること

私達は今までの経験から、
会社の規模や業績も大切かもしれないが、それ以上に相手、
つまり会社のトップが人間的に信頼できることが重要であることを知っています。
これはそれぞれの国民性もあって、なかなか判断が難しい部分です。

私はこれらの条件を満たす会社を探す為に、何回もフィンランドに出かけました。

フィンランドの白夜の夏、そして氷点下30度の冬も経験し、
何百棟ものログハウスを見て回ったり
実際にログハウスで生活している家族を訪れたりしているうちに、
すっかり「フィンランドという国」、「フィンランド人」、
「フィンランドのログハウス」 のファンになってしまいました。

 

 

物静かで、あまり自分からアピールせず、目の奥にやさしさをひそませたフィンランド人は
まるで日本人(多分田舎の日本人)のようで、人間性や信頼は簡単に確立できそうでした。

ただ「自分でログハウスキットを製作している工場」の条件では英語が難しそうでしたし、
海外輸送の問題も経験が少なそうな会社ばかりでした。

しかし、信頼し合えれば 大概のことはうまくいくと信じ、
フィンランドのログハウスキット輸入ビジネスを開始することを決心しました。

その後の永い付き合いの中で、最初に感じたフィンランド人との信頼は全く揺るがず、
今ではビジネスを超えた友情で付き合っていると感じています。

4. 日本でのログキット価格の高さにビックリ!

フィンランドでのログハウス部材キットの仕入先も決まり、
「日本でログハウスを販売するにはどうしたら良いか?」
「ログハウスキットの販売価格は?」 などの準備や調査を開始し、
日本で販売されているログキット価格の高さに驚愕しました。

当時はカナダのログハウス(ハンドカットもマシンカットのログハウスも)が主流で、
フィンランド・マシンカットログハウスはまだ駆け出しの時代でした。

また、ログハウス自体が「高級別荘や高級リゾート地での建物」という分類で、
最初から金持ちを相手にして「どうだ、すごいだろう」とアピールする為に
ログハウスを建ているのではないかとさえ感じました。

まず、フィンランドのログハウスについて世の中に理解してもらう必要がありました。

・フィンランドのログハウスキットは完成度が高く、
コンピュータ管理で精密にカットされ製作されていること。

・フィンランドにおけるログハウスは在来工法(完成された建築工法である)であり、
その工法で建てられたログハウスは立派な建築物であること、
別荘はもちろん住宅としての機能も在来工法や2×4工法に決して引けをとらないということ。

あわせて、ログハウス部材キットを安価でお客様に販売するにはどうすればよいかを考えました。

まず 営業経費を極力おさえる。
そのために一般の建築業界と相反するいくつかの営業スタイルを考案しました。

1.ログハウスキット販売専門の営業マンは置かない。

2.契約前のお客様に営業に出向くことや、
ログハウスカタログの発送後にこちらから営業電話をかけることはしない。

また、ログハウスキット営業としての現地調査には出向かない。
(お客様自身で調査できるようにアドバイスをする。来社していただくようにお願いする)

3.専門誌にカラーページでのログハウス広告はしない。

カラーページの広告は膨大な経費がかかります。
(ログハウス専門誌などに カラー1ページ掲載するのに100万円以上かかり、
それらの広告経費だけでもログハウスキット販売価格の10%程度は上載せさられています)

4.国内におけるログハウス販売代理店及びフランチャイズはしない。

私たちとお客様の間には、誰も入れない。
仲介者が入ればその分ログハウスのキット価格を上げなければならない。

5.ログハウスカタログをご希望の方には「送料&カタログ作成費の一部」を負担していただく。

営業経費節減という意味はもちろんですが、「キートスの考えに賛同してくださる方」
そして「切手同封という面倒な手間も惜しまずにされる方」とだけ
お付き合いさせていただきたいという私達の基本的な考え方です。

また ログハウスキット販売価格に大きく影響してしまう「海外輸送費」
「国内通関手続料」を引き下げる為、
フィンランドからのログハウス輸送ルートやその方法も検討しました。
(当社は輸出入業が生業でした)

次に、「ログハウスは決して金持ちの趣味ではないこと」
「フィンランドではあたり前に普通の市民がログハウスを建てて楽しんでいること」
などを理解してもらうことが課題でした。

そのため キートスは
・「お金はないけれどログハウスの夢を実現したい方 や、

・できるだけ安くログハウスを建てたい方を応援しています。」

をキャッチコピーにし、
とにかく安くログハウス部材キットをお客様に提供することをテーマに
私達のような普通の人々でもログハウスが手に入ることを率先してアピールし、
このログハウスビジネスを開始しました。

5. 日本でのログハウス建築費の高さにビックリ!

ログハウス販売を開始してすぐに
日本での工務店等のログハウス建築費の高さに大変驚かされました。

日本の建築費の大半は(少し言いすぎかもしれませんが)、大工さんの日当が占めています。

様々なサイズで納入される材料を現場で切ったり繋いだり張ったりする作業が多いからです。

フィンランドのログハウス部材キットの場合は
躯体部分 (建物の本体のログ材)は あらかじめカットされています。

それ以上に巨大なプラモデルのように、
整然と分類され 番号順に組上げれば完成するように納入されています。

 

 

そしてそのログハウスは、組上げたら外壁も内壁もすでに完成されているはずです。

それなのに往々にして、建築業者は在来工法での積算方法をとる場合が多く、
俗に言う「坪単価」を持ち出して、安易に「坪50万円」とか「80万円」とかを
計算の原資に組み込むのです。

ログハウス建築では必要のない「壁内部の断熱材」や「釘や接続金具」も一切顧慮せずに・・・ 。

それにログハウス建築に必要な日数や人数は
在来建築のそれに比べたら1/3程で済むはずなのに、そのこともあまり顧慮せずに・・・ 。

これでは建築屋は楽しくてしょうがないし、金持ちしかログハウスを建てられないわけです。

6. セルフビルドを奨励する

日本国内における高い建築費問題を解決するため、私たちは次の2点を検討しました。

1.セルフビルド

フィンランドのログハウス工場探しの旅の途中、何人もの ログハウスを自分で建てている おじさん、おじいさん、家族に出会いました。

皆さんログハウスを建てることが本当に楽しくてしょうがない様子でした。

 

 

とりわけ、湖の畔で 立派なログハウスを建築途中のおじいさん(多分、おじさん)は、
「全部自分で作っているの?」と聞いたら
「あたり前だよ!こんな楽しいこと人に頼めるか!」とニコニコ話してくれました。

「 ログハウスのセルフビルド、こんな楽しいこと人に頼めるか! 」というフレーズは
その後何年も私たちの『心の糧』として刻まれました。

そもそもログハウス(フィンランドの丸太組工法)は、
昔々フィンランドにたどり着いたフィンランド人の祖先たちが
この厳寒の地で他人に頼まず(プロの職人をあてにせず)自分たちだけで
寒さに耐えられる頑強な建物を作る方法として確立されてきた方法なのです。

祖先にできて、電動工具を使える私達に
ログキットとして納入される部材でログハウスが作れないわけはありません。

2.ハーフビルド

「誰にでもログハウスは建てられます」とは言っても、問題は時間です。

ログハウスを建築するための時間を捻出できないときは
やはり「建てられない」と同義語になってしまいます。

『お金はないけれどログハウスの夢を実現したい方や、
できるだけ安くログハウスを建てたい方を応援しています』
というキートスのお約束を実践する為、
「自分で出来ることは自分でする」を掲げました。

 

 

この意味は、
なるべく自分自身で作業するけども、
時間がかかる工事や危険が伴う工事や資格が必要な工事は地元業者さんに依頼したり、
場合によってはキートスが担当しますよ!
ということを表現しています。

そして当時キートスでは『部分請負工事』という言葉を使っていましたが、
建築工事を切り分けてお客様の要望のあった部分の工事だけを引き受けています。

また、ログハウスのセルフビルドを始めたけれど何らかの理由で無理になった場合、
それ以降の工事もキートスが引き受けます。

「だから、安心して『自分で出来ることは自分でする』と決心をしてください」と説明し、
多くの方々から指示をいただきました。

でも、当時はこの考え方は非常識だと思われました。

建築業者さんが儲けの多い工事費からの収入をカットするなどとんでもないことだし、
今まで「素人には無理!」と言い放してきたのに、
一部の工事を除けば充分素人でも出来ることが世の中に知れ渡ったら
建築業者さんにとっては死活問題になってしまうからです。

今でこそ『ハーフビルド』とか『セミセルフ』という言葉は知られていますが、
その頃はまだこれらの言葉はありませんでした。
それをいつの間にかいくつかのログハウスメーカーさんが使うようになり、
私たちも「ハーフビルドを受け付けます」というような表現を使うようになりました。

自分でログハウスを建てようと決心されたお客さまに最も必要なことは、
「完璧なセルフビルドマニュアル」を提供できることです。

(これは、いまだに完成していません。
現在もセルフビルダーさんから受ける質問や小さな失敗談を整理して
説明を加えるなどのバ―ジョンアップを日々続けているからです。
ただ、この仕事を20年以上続けていますが
最近は施工中に質問電話を一度もかけずにログハウスを完成させる方も出てきましたので、
キートスのマニュアルも「ほぼ完成」と呼べるところまできたのかもしれません。)

 

 

セルフビルダーさんの環境や作業できる時間、お手伝いの有無など、
全てのお客様は条件が違います。

その個々のお客様の条件に従って適切なアドバイスが出来るということは、
「どれだけ多くのお客様の建築サポートを経験したか?」につきます。

それは何百棟ものログハウスをセルフビルドしたお客様達から
私達が逆に教えていただいたことなのです。

例を挙げればきりがないようないろいろな事例を経験して、
今私たちは『キートスは充実した建築サポートを行います』と自信を持って言えるのです。

ログハウスビジネス経験がまだ数年とか、
あるいは材工一式でログハウスビジネスをされてきた会社には
簡単に理解できることではないと実感しています。

7. キートスは明日もログハウスのセルビルダーたちを応援し続けます。

私がドイツでログハウスに出会ってから自分の山小屋として初めてログハウスを建て、
その後自宅もログハウスに建て直し、
そして次々にスタッフたちもログハウスを建築しながら20数年が経ちました。

いまや全国に私たちと出会ってログハウスを建てたユーザーさんが広がっています。

四国や九州、北海道など、一回もお会いしたことがないけど、
手紙やメールと写真とお電話で
今も交流を続けていただいているログハウスユーザーさんたち。

「こちらにきたら必ず寄ってくださいね」と10年以上も言い続けてくれるお客さまたち。

 


 

皆さんが、私たちが(キートスが) 手に入れた『 宝物 』なのです。

すべてのお客様たちが、それぞれログハウスセルフビルド中の苦労や満足、
その後のログハウス暮らしを楽しそうに語ってくださる時、
私たちは「ログハウスの仕事をしてきて良かった」と心から思えるのです。

そしてそれこそが、明日出会うだろう『 ログハウスを自分で建てよう 』、
『 自分で出来ることは自分でするので、出来るだけ安くログハウスを手に入れたい 』
と決心されるお客様とお話をすすめる原動力になっているのです。

だから・・・
キートスは明日も、ログハウスのセルビルダーたちを応援し続けます。

 

株式会社 キートス

〒950-2022 新潟市西区小針2-17-1
TEL 025-233-5005

 

ログハウスのキートス|セルフビルドを応援するログハウスメーカー