大工さんとセトリング

 

何年か前の出来事ですが、 知り合いの大工さんに建ててもらった ログハウスのお客様から 電話がありました。

そのログハウスは 森の中の別荘として 建っていました。

 

「あの~、一度 見てもらえませんか。 これはチョッと おかしいんじゃないかって 友達が言うものですから。

ログハウスは完成して もう使ってはいるんですけれど・・・」

 

現場を確認して、 愕然としました。 セトリング対策が 何もしてありません。

ドアも、 窓も、 間仕切壁も、 階段も・・・。 それどころか、 ボンドをかませながら しっかりと ログに止まっています。

もちろん キートスの 「ログハウス建築マニュアル」 は 渡してありますし、 セトリングのことも 話してあります。

2段以上のログにまたがって 物を止めては いけません。

 

一見、建具廻りの飾り板が施工された状態では内側のセトリングスペースがどうなっているのか 全く分かりません。

外部化粧板を 外した状態が 写真です。

大工さんにすれば、ボンドをつけた材で隙間を埋め、キッチリ仕上げたわけです。

 

こんな事は よくある話だと 聞きます。

大工さんにとって 今までの経験上、 建物は そんなに下がるわけがないし、 綺麗にしっかり隙間なく止めることが いい仕事なのです。

たとえ 何度も 「ログハウスの壁は下がるからね」 と言われたとしても、 今までの経験上 どうしても考えられないのです。

 

かえって素人さん(セルフビルダーさん)は、 疑いなく キートスのマニュアルを信じ、 疑問に思えば すぐに質問もしてくれます。

皆さんが ログハウスのセルフビルド中に 何回も 何回も 「ここはどうすれば良いでしょうか?」

「こうしてしまったけど間違いではないですか?」 「後で疑問に気づいたんですけど、直した方がいいですか?」

と 質問をしてくださることで、 より完成度は 高まっていきます。

 

しかし、長年 建築業を経験してきた大工さんは、 あまりマニュアルを読んでくれません。 また、初歩的だと思われるのが嫌なのか 質問をしてきません。

そして 往々にして 大工さん達は 最後に 「なんとかやっつけました」 とおっしゃいます。

ちょっと質問してくれたら、または、もうすこしマニュアルを読んでくれたら やっつけないですんだのに! と残念に思うケースは 少なくありません。

このように、 得てして人よりうまく出来る事、 人よりたくさん経験している事が 邪魔をすることもあるのです。

 

私達も もっと真摯に より学習して、 「自分の技術、知識を過信しないこと」 「柔軟な頭を持つこと」 「進化しつづけること」 を肝に銘じようと思いました。

 

[ ログハウス徒然草 09.12.09 ]